映画「許されざる者」

1992年アメリカ映画

クリント・イーストウッド監督

ワーナー映画

第65回アカデミー賞受賞

 

妻を亡くした元殺し屋が子供の生活のため、足を洗った殺しを残虐犯相手に賞金目当てで行う西部劇

 

西部劇というものを初めてみました。西部劇とは1860~1890年代の」アメリカ西部開拓時代を舞台とした映画のことを指すそうです。白人の主人公が先住民を倒すというストーリーで相場が決まっていたが、世論の変化につれて、あるいは世論を変えるような画期的な西部劇によって、その図式は崩れていったそうです。

監督はこの作品について「最後の西部劇」だといっています。

今作での西部劇における悪役は「権力」であり、主人公は私利のため相手が悪ならという妥協のもと殺しを引き受けた正義とも悪ともいえない立場でした。普遍歴な正義が存在しないということを示している点では、西部劇の集大成と呼べるのかもしれません。

そして、友人を殺された時の主人公のラストでの行動という主人公個人の正義も描かれていて、普遍的だけで終わってはいけないというメッセージも感じました。

クリント・イーストウッドらしい主人公が渋くかっこいい作品でした。

 

映画「ロリータ」

スタンリー・キューブリック監督

1962年アメリカ映画

 

ある娘に恋した中年男が娘と親密になるためにその母親に近づくことから始まる偏愛ストーリー

 

まずみて感じたことは、キューブリック監督でこの映画内容である割に、性描写が全くないということでした。

これに関しては時代的なものということでしたが、どういうことなのでしょうか。わかりませんが。

 

主人公の男は中年で恋に落ちた相手は14歳の少女という、一般的には異常と思われるような愛というのが本筋でした。しかし主人公の愛、愛情表現は純情を感じさせるものであり、そこがこの映画の魅力だと思います。イギリスのコメディアンであるピーター・セラーズ演じるキルティという饒舌で不気味なキャラもまた魅力的でした。まさにキューブリックの映画っぽい人物です。調べてみるとやはり「博士の異常な愛情」では主人公に選ばれていました。

内容でいうと、ばれてほしいがための日記を綴ってみたり、口酸っぱく行動を制限させたり、それでいて暴力、性暴力的なことは一切せず相手の気持ちを尊重しようとするところなど。冒頭の射殺シーンにしてもその純愛ゆえの行動の一つに過ぎないとさえ感じました。

 

結局主人公の恋が実ることはなかったのですが、最後まで自分の愛を貫いた様に、いろいろな愛の形があっていいのではないかと訴えを感じました。時代的な制限があるということがよりそう感じさせます。

 

 

映画「アメリカの影」

1959年制作のアメリカ映画

ジョン・カサペテス監督

黒人の血を引く三人兄妹のそれぞれの葛藤を描いたストーリー

 

 

この映画をみたときの僕の解釈は60年代のアメリカの影の部分、アンチ社会的な人々の生き方を描いていて、黒人の血を引いているというのもその一部というものでした。

しかし調べてみると黒人であるということがこの映画でいうアメリカの影そのものであるということでした。

直接的に黒人ということで差別を受ける描写は一つしかなかったので、そういった差別の意識をあまり持たずに生きている僕らには読み取りづらいのかもしれません。逆に、60年代の人にはそれだけで充分伝わったのでしょうから、そこに現代とのギャップを感じます。

また、この映画は主人公らにとってはハッピーエンドなのですが、社会的には黒人差別がなくなったわけではないので、活かすアイロニーだと思います。

 

全編にわたって台本がなく即興演出だそうです。

またこの映画は、制作された1年後に監督が再製作をしたものが現在世に出ているもので、最初のバージョンはも見れないそうなのです。監督は、撮りなおした作品のほうがよりリアルな演出ができていると考えているそうなのですが、当時の批評家の中には最初のほうがよりよいという声もあるそうなので、みれないのは残念です。

 

社会風刺という重い内容とは裏腹にクラシック映画らしい穏やかな空気感というギャップが効果的でした。

またみたい作品です。

映画「ノーカントリー」

監督 ジョエル・コーエンイーサン・コーエン

2007年アメリカ映画

 

麻薬組織の金を手にした男が殺し屋に命を狙われる話

 

いまひとつ、わだかまりが残るような内容でした。

序盤から、無音の演出やハビエル・バルデムの存在感ある演技やそのキャラクターなど、映画の世界観は独特でよかったです。

そこからのストーリー展開があまりなく、かと思えば終盤であっさり主人公が死んでしまい、もう一人の主人公であろう保安官の抽象的なセリフで終わりました。

殺戮シーン以外で軸となっているのが、セリフからうかがえるそれぞれの信念、哲学といった部分なのでしょうが、説明不足のように思えました。あまり理解できなかったです。

 

調べてみると数々の賞を受賞しているようですが、説明はハビエル・バルデムの演技のことばかりでストーリーについての解説は見当たらなかったので、理解できないままのレビューとなってしまいました。

映画「オー・ブラザー!」

2000年制作アメリカ映画

監督 ジョエル・コーエン

脚本 ジョエル・コーエンイーサン・コーエン

制作 イーサン・コーエン

 

主演 ジョージ・クルーニー

1930年アメリカミシシッピで、三人の囚人がそのうちの一人が埋めた宝を求めて脱獄することから始まる冒険物語

 

とてもおもしろかったです。

冒険の前に登場する、三人の未来を予言する老人にセンスを感じました。唯一現実にはありえないシーンなのですが、あの老人の出現がこの映画にあるファンタジー感をうみだしたのではないでしょうか。

ストーリーもよかったです。人との出会いに助けられたり裏切られたり、それでも目的のため前進していく、登場人物はおじさんばかりですが少年の冒険ようなお話でした。舞台である1930年アメリカは大恐慌期で、会う人会う人みんなお金に執着しています。それはそれでその時代背景を表していていいと思いますが、さらにそれらの人々と対照的に、愛を追い続けた主人公がより際立って見えたこともステキでした。

ラストの彼の後姿が何より印象的でした。きれいな冒険映画でした。

 

コーエン兄弟の共同製作映画は他にもいくつかあるようなので観てみたいです。